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没入感ある世界観と操作性の両立 ——『KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ』のUIができるまで

目次

※(こちらは2026年6月1日Cocoda掲載の弊社紹介記事を、一部修正し転載したものです)

2026年4月23日、コロプラから完全新作タイトル『KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ』(以下、ツクヨミ)がリリースされました。

本作は、金子一馬氏が描く独創的なダークファンタジーの世界観と、デッキ構築型ローグライクの緊迫したゲームシステムが融合したタイトルです。

私たちは、このツクヨミというゲームの開発にあたり、デザイナーとしてUIを中心としたゲーム内のデザイン全般を担当していました。

デザインを進める中で意識していたのは、ゲームクリエイター・金子一馬氏が手がける最新作として、その世界観をいかにUIに落とし込むか、そしてゲームシステムを十分に楽しめる操作性をどのように両立するかという点です。

特に今回は、コロプラにとって初となるコンシューマーゲーム(Nintendo Switch向けソフト)におけるUIデザインであり、手探りの部分も多い中で設計を進めていく必要がありました。

今回は、実際のデザインプロセスを大きく以下の2パートに分けて紹介します。

  1. 世界観とゲームシステムをつなぐ、UIコンセプト設計
  2. コンシューマーゲームに最適化したUIデザイン

世界観とゲームシステムをつなぐ、UIコンセプト設計

私たちは、『KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ』と世界観を同じくする先行タイトルであるモバイルゲーム『神魔狩りのツクヨミ』の初期構想が固まりつつある段階で、デザイナーとして参画しました。

ツクヨミの概要や世界観について共有を受けた後、まずはUIコンセプトの設計に取り掛かりました。

モチーフは「寄木細工のからくり箱」

ツクヨミのUIコンセプトを考える設計において、重要な要素として捉えていたのは、次の3つです。

  1. 金子一馬が描く重厚な世界観・シナリオ
  2. ローグライクというゲームシステム
  3. AIを組み込んだゲーム体験

まずは、これらの要素をもとにキーワードを発散し、デザインの方向性を探っていきました。

特に重視したのが、金子一馬氏の世界観です。金子氏が作成した設定資料を繰り返し読み込み、解釈を深めていきました。現代の東京を舞台としながら、日本神話にとどまらず、世界中のオカルト要素と接続する世界観。それでいて、ファッショナブルでモダンな印象も併せ持っています。

この世界観を踏まえ、東京という舞台設定から、日本らしい伝統的・文化的なモチーフを取り入れられないかと考えました。ただし、あくまで現代が舞台であるため、筆字や和紙といった“過去の日本”を想起させる表現は避ける必要があります。

リサーチを進める中で、例えば「麻の葉模様」のような伝統的な幾何学模様をベースにしつつ、モダンでスタイリッシュな印象をつくれないか。さらに、ローグライクや生成AIといったゲームシステムともつながるようなモチーフはないか…と考えを深めていきました。

その結果たどり着いたのが、「寄木細工のからくり箱」というモチーフです。

からくり箱は、解き方によって開く場所や構造が変化する仕組みを持っています。この性質が、プレイヤーの行動によって結果が変わるローグライクやAIの構造と重なり、世界観・システムの両面において適合すると判断しました。

このモチーフをもとに、模様や色味、フォント、レイアウトといったビジュアル要素へと落とし込み、UIコンセプトのモックデザインを制作しました。

それを金子氏を含むプロジェクトメンバーに提案し、大枠のUIコンセプトが定まることになります。金子氏からは、現代的な雰囲気を損なわないために、木目の質感は使用せず、幾何模様のみを抽出して展開した方が良い、といった舞台設定との整合性に関するレビューをもらい、その後のデザインに反映しています。

モックアップの制作

次に、より具体的なモックアップの制作へと進みます。

ちょうどこの時期には、主人公「ツクヨミ」たちのデザインも完成していたため、適宜連携しながらビジュアルへ反映していきました。

実際にこの段階で制作したモックが以下です。これは、社内向けのティザービジュアルとしても活用していました。

UIコンセプトを踏襲しつつ、例えば4人の主人公(十六夜月・満月・新月・半月)に合わせて背景モチーフを変えるなど、金子氏が描くツクヨミの世界観のエッセンスをより深く取り入れています。

一方で、この時点では詳細な機能仕様はまだ検討段階にありました。そのため、後から情報項目やレイアウトが変更されることを前提としつつも、可能な限りインゲームやダンジョンマップなどではローグライクらしいUIを想定してモックアップを制作しています。

つまり、この段階のモックアップは、「ツクヨミらしい世界観のUI」と「ローグライクゲームらしいUI」という、2つのらしさを組み込んだUIの方向性を可視化する役割を持っていました。

このモックアップができたことで、その後複数のデザイナーが関わるようになっても、一定の統一感と品質を保つことができました。

プレイヤーの没入感を高める

その後は、機能仕様とUIコンセプトを照らし合わせながら、ホーム画面やバトル画面など各種画面のUIデザインを作り込んでいきます。

このフェーズで特に重視したのは、プレイヤーの没入感を高めることです。

例えば、ゲーム開始時の演出について。

本作では「THE HASHIRA」というダンジョンに潜入するのですが、「調査開始」ボタンを押した直後にそのままプレイが始まるのではなく、どの階層に向かうのかが直感的に分かる演出画面を追加しました。

ローグライクゲームに不慣れなプレイヤーにとっては、「調査開始」を押しても、これからどこに何をしに行くのか、ゴールがどこなのかが分かりにくい場合があります。そうした違和感を解消し、自然にゲームへ入り込めるようにするための工夫です。

また、ゲームシステムと世界観のつながりを滑らかにすることも重要でした。

例えば、「死亡するとスタート地点に戻る」「ステージクリア時に所持していたカードがすべて破棄される」といったローグライクにおける定番の仕様も、ツクヨミの世界観の中で「なぜスタート地点に戻るのか」といった説明や示唆がなければ、プレイヤーに違和感を与えてしまう可能性があります。

こうした違和感が生じた場合には、金子氏やシナリオライターと相談しながら、世界観設定を更新するなどの調整も行っていました。

コンシューマーゲームに最適化したUIデザイン

UIコンセプトや各画面のベースは、先行タイトル『神魔狩りのツクヨミ』である程度形になっていました。

しかし『KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ』は、その世界観を継承しつつも、完全新作として作り上げたタイトルです。さらに今回は、弊社にとって初となるコンシューマーゲーム(Nintendo Switch向けソフト)としての開発でもありました。

同じゲームUIであっても、モバイル向けとコンシューマー向けでは設計が大きく異なります。私たち自身も手探りの中で、すべてのデザインを作り変えていきました。私たちにとっても学びがあった点をいくつか紹介します。

タップ操作にはない「選択」というステップ

モバイルとコンシューマーのUIデザインで大きく異なる点の一つが、タップ操作かゲームパッド操作かという違いです。

モバイルでは、画面に表示されたボタンをそのまま指で押すことができます。一方で、コンシューマーゲームでは、十字キーやスティックで対象を選択し、そのうえで決定する操作が基本になります。

つまり、モバイルでは「表示 → 押す」だった流れが、コンシューマーでは「表示 → 選択 → 押す」というステップになります。

ただし、選択を飛ばして直接ボタン操作で実行する場合もあるため、行動を決定するまでに2つの操作パターンが存在することになります。

例えば、「図鑑画面」では、最初に一番左上のカードが選択されています。十字キーやスティックで選択中のカードを切り替え、Aボタンを押すことでカードの詳細画面を開くことができます。

一方で、画面上部にある「創成札」「通常札」のタブ切り替えや、前画面に戻る操作は、十字キーやスティックによる選択を挟まず、ボタン操作で直接行えるようにしています。

また、関連して考える必要があったのが、選択操作のループ設定です。

例えば、一番上のアイテムを選択している状態で、さらに十字キーの上を押したときにどうなるか。下端にループさせるのか、その場に留まるのかを決める必要があります。

今回は、次のようにルールを分けました。

  • 操作方向が1軸の場合は、ループ可能
  • 操作方向が2軸の場合は、ループ不可 (人によって想定するループが異なるため)

ゲームパッド向けの情報設計・操作説明

ゲームパッドでは、A,B,X,Y,R,Lなど複数のボタンを使い分けて操作します。そのため、どのボタンで何ができるのかを、画面内で適切に説明する必要があります。

このとき重要になるのが、情報のまとまりの分かりやすさです。

 この情報のまとまりをつくるために、今回は以下のような仕様を取り入れました。

  • 操作説明を画面下部にまとめる(画面ごと・状況ごとに操作説明を登録)
  • 対象となるUIの近くに表示する
  • 操作が自明 / 複数のボタンで同一操作ができる場合は、操作説明を省く

普段ゲームをプレイしている時には自然に行っている操作でも、いざ自分で設計するとなると、意外と迷う場面が多くあり、「自然に操作できる状態」をつくることの難しさを実感しました。

操作性の統一と、画面ごとのワクワク感のバランス

モバイル向けかコンシューマー向けかに関わらず、私たちがゲームUIをデザインするうえで大切にしている観点についても残しておきたいと思います。

それはやはり、プレイヤーが世界観に没入し、ワクワクし続けられるかどうかです。

もちろん、自然に操作できることは前提として重要ですし、開発観点から、ダイアログやボタンなど一定の仕様を共通化しているパーツもあります。一方で、ゲームUIにおいて最も大切なのは、プレイヤーがそのゲームにのめり込み、楽しめる体験をつくることだと考えています。

そのため、単に共通パーツを組み合わせるのではなく、「画面ごとに、ワクワクできる最適なデザインにする」ことを大切にしています。

例えばタイトル画面では、『神魔狩りのツクヨミ』で画家Kが登場するときに使われていた赤い部屋を、『KAZUMA KANEKO'S ツクヨミ』では思い切ってタイトル画面に採用しました。

『KAZUMA KANEKO'S ツクヨミ』製品版のタイトル画面

この空間を「今から画家K —— 金子一馬の世界に入っていく、その前段階のメタ的な空間」として使えば、とてもアイコニックになるのではないかと思ったからです。インゲーム内はいつものダークなトンマナで揃えていますが、あえてここだけスパイスを入れるというか、「良い意味で違和感」を提供したいと考えました。

金子氏にも相談し、こちらの赤い部屋を採用することになりました。

また、『神魔札創成画面』についても、ゲーム内のトンマナとは雰囲気がガラッと変わる画面です。

こちらは、自身の行動に相応しい神魔札を、オオカミという上位存在が授けてくれる場面であり、このゲームの中でも最もコアな体験の一つです。そのため、画面やUIも白を基調としており、オオカミの存在や神聖さを印象付ける場面となっています。

『神魔狩りのツクヨミ』では、「ツクヨミのレベルに合わせてオオカミも進化していき、創成される神魔札も進化する」ということを視覚的に伝えるために、レベルが上がるたびに神魔札の後ろに神社のような建物がどんどん建っていく、というUIを作成しました。

自身で提案し、金子氏に監修してもらいながら作成したのですが、そのおかげで、他にはない唯一無二のUIになったと思っています。

また、非常に細かい隠し要素として、神魔札が創成される前に札に模様のようなものが現れるのですが、自分が正義寄りの行動をしたのか、中立寄りの行動をしたのか、あるいは荒っぽい行動をしたのか……という自身の行動によって、よく見ると模様が変わっています。


特にゲーム内で説明しているわけではないのですが、ユーザーさまの中にはその法則性に気付いてくださった方がいて、その観察眼に驚くと同時に、そこまで見てくださっていることをとても嬉しく思いました。

さいごに、バトル後にカードを1枚選ぶ「神魔札選択画面」があるのですが、当初は、パートナーからツクヨミに手渡しされるものではありませんでした。

バトルが終わった後、なぜ神魔札をもらえるのか、どういう理由でもらえるのか。そうした建付けをライターや金子氏と相談し、世界観への没入を深めるために、「パートナーから手渡しされる」という設定を決めました。さらに、それを表現するために、2人の手のイラストを加える工夫をしています。

『KAZUMA KANEKO'S ツクヨミ』では、このイラストをさらに活かせるように、実際に手渡ししているような演出を作成しました。

さいごに

このような試行錯誤を重ねながらつくりあげてきた『KAZUMA KANEKO’S ツクヨミ』は、2026年4月23日に発売されました。

実際にプレイしてみると、UIという観点からもさまざまな発見があるかもしれませんし、何よりツクヨミというゲームの重厚な世界観やゲームシステムの楽しさを、存分に味わっていただけたら嬉しいです。

KAZUMA KANEKO'S ツクヨミ(2026.04.23 ON SALE)

今回のプロジェクトは、私たちにとっても新たな挑戦ばかりでした。金子一馬氏が描く世界観、AIを活用した新たなゲーム体験、そしてコンシューマーゲームへの初の挑戦。

その中で改めて実感したのは、UIはゲーム体験そのものを形づくる重要な要素の1つであるということです。世界観をどう伝えるか。ゲームシステムをどう理解してもらうか。そして、プレイヤーがどこまで自然に没入できるか。そのすべてにUIが関わっています。

何度も作ってはチームでレビューを行い、実機で操作しては作り直す。そんな地道な試行錯誤の繰り返しでしたが、このゲームがプレイヤーの皆さんにとって本当に面白いものになるように、私たち自身も楽しみながら向き合うことができました。

これからも、より楽しく、より面白いゲーム体験を、デザインの力で支えていけたらと思います。